新規事業のウラ側|メドピアが薬局向けの事業「kakari」を立ち上げた理由【社長室・後藤直樹】

メドピア 後藤直樹

2019.8.5

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事業のウラ側
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先日6月25日、メドピアは初の薬局向けサービス「kakari(かかり)」を立ち上げました。その企画から立ち上げをリードしているのが、社長室の後藤です。経営コンサルタントとして前職で培った経験やノウハウを生かしながら、「自らサービスをつくって広めたい」と、2017年8月にメドピアへ入社しました。

メドピアの「頭脳」として、いつも隅々まで“筋”のとおった企画を出す後藤。しかし、初の事業立ち上げでは、そんな強みが邪魔になる苦労もあったようです。自らの足でユーザーヒアリングや営業を行いながら、どのように薬局や患者さんのニーズを汲み取り、サービスを立ち上げていったのか。「kakari」開発のウラ側を話してもらいました。

新規事業の立ち上げ方や、医療サービスに興味のある方はぜひご覧ください。

待ち時間も少なく、安心だから。患者さんが「いつもの薬局」にまた行きたくなるアプリ

メドピア 後藤直樹

後藤 直樹(ごとう なおき)
社長室 新規事業推進グループ グループリーダー

2013年4月、国内独立系経営コンサルティングファームに入社。IT・ライフサイエンス・小売領域を中心に、新規事業立案・中期経営計画策定等の業務に従事。2017年8月にメドピア株式会社に入社。入社後は、事業提携の推進やMedPeer内の症例共有サービス「CASEPEDIA」の立ち上げを担う。2019年1月より社長室の新規事業推進グループで、薬局向けに展開する新規事業「kakari」の立ち上げ・事業展開に従事。

――まずは、「kakari」がどんなサービスか教えてください。患者さんと薬局にとって、何ができるサービスなんでしょうか?

後藤:まず薬局の視点に立って説明すると、「kakari」は、薬局の「かかりつけ薬局化」を支援するサービスです。「いつもの薬局を、あなたの“かかりつけ薬局”に」をコンセプトに提供しています。

「かかりつけ薬局」の定義はいろいろありますが、私たちは「患者さんが、利用する薬局を一つに絞ること」としています。それは薬局から見ると、かかりつけ薬局として患者さんに選ばれるようになることです。「kakari」は、なんとなく利用されていた「いつもの薬局」から、患者さんに意識して選ばれる「かかりつけ薬局」になることを支援するためにつくりました。

kakariが実現する「かかりつけ薬局」の姿
kakariが実現する「かかりつけ薬局」の姿

後藤:「kakari」の加盟薬局に来た患者さんは、店頭で勧められて「kakari」のアプリをダウンロードします。5桁のコードでその薬局を「かかりつけ薬局」に登録すると、スマホ画面いっぱいに登録した薬局の情報が表示されます。「kakari」の他にない一番の特徴は、こうして薬局が自薬局の「専用アプリ」のように患者さんに勧められる点です。

――アプリでできる主な機能は、何でしょうか?

後藤:「kakari」には大きく3つの機能があります。1つ目は「処方せん送信/店頭チェックイン」という機能。薬局で薬を受け取るのに、平均20分ほどの待ち時間がかかるという調査もあります。「kakari」で薬局に事前に処方せんの写真を送っておくと、薬局が前もってお薬の準備を進められるので、待ち時間が少なく薬の受け取りができます。

2つ目は「事前ヒアリング」機能です。これは、事前に処方せんを送るのと同時に、患者さんから任意で副作用の有無や残薬状況などを確認するものです。この情報があることで、薬剤師さんはより適切に服薬指導ができると同時に、患者さんの調剤・服薬指導の情報を記録する薬歴記載の業務が効率化できます。

3つ目の機能は「お薬相談」機能です。例えば、いつも通っている薬局の薬剤師さんに「今飲んでいる市販薬があるのですが、先日もらった処方薬と一緒に飲んでも問題ないでしょうか?」といった相談を気軽にできます。

かかりつけ薬局アプリ「kakari」の画面イメージ
かかりつけ薬局アプリ「kakari」の画面イメージ

後藤:近日中に、「一斉送信」機能もリリースする予定です。薬局では「栄養相談会」などのイベントを開催することも多いのですが、薬剤師さんはチラシを配布したり、告知に苦労されているんですね。そこで、「kakari」でかかりつけ薬局に登録してくれた患者さんに、薬局から一斉にお知らせを送れるようになります。

――薬局が「かかりつけ薬局」になるための機能が盛り込まれているんですね。

後藤:患者さんは、何かメリットがないと薬局を一つに絞ったりはしません。どんな理由があったらその薬局を「かかりつけ薬局」にするのか、と考えたら、その方が「安心」だし「便利」だからですよね。

患者さんにとっての「kakari」は、いつもの薬局をもっと「安心」で「便利」に利用できるようにするアプリです。安心で便利だから「かかりつけ」にしたくなる。そういうコンセプトで機能を設計しています。

――そういう意味で見てみると、「kakari」のロゴマークはとても安心感のあるデザインですね。

後藤:ロゴは、“薬局と患者さんをつなぐ「&」になりたい”という思いを込めて、「&」と「K」の文字を組み合わせています。「kakari」のデザインはSEESAWさんに支援してしていただき、このロゴも私たちの想いを汲み取って提案してくださいました。

ちなみに「kakari」という名前は、事業企画の本当に初期の頃に決まりました。その後、開発の中で何度か方向性に悩むシーンもあったんですが、この名前とコンセプトは、いつも意思決定の羅針盤になってくれました。「kakari」にとって一番大きな意味を持つのが、この名前とコンセプト、そしてそれを反映したロゴだと思います。

「&」と「K」を組み合わせた「kakari」のロゴ
「&」と「K」を組み合わせた「kakari」のロゴ

今、変わろうとしている薬局をサポートしたい。「kakari」開発のきっかけ

――コンセプトはよくわかりましたが、どうやってここにたどり着いたのでしょうか?

後藤:事業構想の背景にあったのは、調剤薬局が今迎えつつある大きな変化の潮流です。

薬局の歴史を少し説明すると、昔は病院が診察と薬の処方だけでなく調剤まで行う「院内処方」がほとんどでした。しかし、様々な背景から、患者さんの安全性を確保するために薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師と薬剤師が分担して行う流れになったんです。これが「医薬分業」と言われるものです。

現在はそれが進み、患者さんが「院外」の薬局で調剤を受けた割合(医薬分業率)は70%を超えています。しかし同時に、医薬分業の本来の意図とは外れて進んでしまったと思われるのが、「門前薬局」という形態です。

――薬局の多くは、病院の目の前に並んでいますよね。

後藤:調剤薬局の75%が、病院・クリニックに隣接する門前薬局なんです。そうすると必然的に患者さんは、病院ごとに近くの薬局で薬をもらうようになります。患者さんの中には、「隣の薬局でもらわないといけないんじゃないの?」と思っている方も多くいらっしゃったり…。

バラバラの薬局で薬をもらうことが問題なのは、患者さんの服薬状況をトータルで把握できなくなるからです。もちろん、お薬手帳が漏れなく利用されていれば把握できるのですが、そうでないことも多い。そうなると、重複処方や併用した場合にリスクがある処方がされていても、薬局は気づくことが出来ません。いろんな医療機関でたくさんの薬を処方されている患者さんにとっては、これは大きな問題です。

この現状を大きく変えようと、2015年10月に政府が出した指針が「患者のための薬局ビジョン」です。そこで、「“門前”から“かかりつけ”、そして“地域”へ」という標語が示されました。

薬局が「近いから(立地)」ではなく、「その薬局がいいから(機能)」という理由で選ばれ、「かかりつけ薬局」になる。そして、薬剤師の専門性を活かして地域医療に貢献していく形に変わっていきましょうという指針です。この流れは、以降の調剤報酬改定や規制改革の中身を見ても確実に加速しています。

――薬局が迎えている変化を背景に生まれたのが「kakari」なんですね。

後藤:はい。薬局にとって「かかりつけ薬局」への転換は、果たすべき役割からビジネスモデルまで大きな変化を迫るものです。これを実現するのは、簡単なことではありません。

だからこそ「かかりつけ薬局化」を支援するというコンセプトを掲げ、薬局視点に立ったサービスをつくろうと考えました。「電子お薬手帳」など患者向けのサービスはすでに多くありますが、薬局視点に立ったものはまだほとんどありません。最初に掲げたこのコンセプトは、開発当初から最後まで揺るぎませんでした。

また、今まさに変わろうとしている業界で、かつ「小規模分散事業」という点も、ITソリューションを提供するのに適していました。調剤薬局は、半数以上が個人経営か4店舗以下の小規模経営なんです。小規模の薬局は自力でIT化を進めるのは難しいので、SaaSのような形でサービスを提供しやすい環境でした。

地道なヒアリングから始まったサービス開発―こだわり抜いたユーザー体験

メドピア 後藤直樹

――「kakari」の機能は、どのように考えて決めていったのでしょうか?

後藤:実は、最初に考えていたコア機能は「服薬記録」機能でした。でも、いざ自分の両親や知人などに患者としてのニーズをヒアリングしてみると、みんな口を揃えて「薬の記録なんてしない」の一言。さらには、本当に服薬記録が必要な方、例えば高齢者などは多くがスマホを使いこなせていないという状況。あぁこれはだめだ、と思いましたね。

でもそのヒアリングの中で、薬局に対する他の声を聞くことができました。一番多かったのが「薬局の待ち時間が長い」というもの。さらに、薬局へ処方せんを事前に送信できることを伝えると、知らない方がほとんどでした。

――処方せんの事前送信ができるなんて、私も知りませんでした。

後藤:その実態をちゃんと調べようと、調剤薬局に定期的に通う患者さん600名にアンケート調査を実施しました。「電子お薬手帳」「服薬記録」「処方せん送信」「お薬相談」の4つの機能のうち、どれが一番使いたいかを聞くと、「処方せん送信」を利用したいという声が圧倒的に多かった。その理由はやはり、「待ち時間を減らしたい」なんです。

「処方せん送信」自体は既にあるサービスなのに、存在を認識していない人がとても多かった。「電子お薬手帳」アプリの付属機能として隠れてしまっているなど、想定される理由はいくつか浮かびましたが、いずれにしろまずは、「待ち時間の短縮」というコアニーズに応え、そこからお薬相談などの「安心の提供」へと価値を広げていこうと設計しました。

――実際にアプリをエンジニアやデザイナーと開発してみてどうでしたか?

後藤:とても優秀なメンバーに恵まれたので、正直あまり苦労した点はありませんでした。メドピアのエンジニアは一緒に事業にコミットしてくれるし、本当に優秀です。エンジニアから意見をもらって仕様を変えたことはたくさんあります。

また、開発チームには薬剤師もいるのですが、彼の薬剤師としての視点で取り入れた工夫が多くあります。子供の場合は体重もあわせて聞いたり、薬局で作成する書類に合わせて生年月日は和暦にしたり。処方せんが送られた時点で、薬局が調剤準備に必要な情報がすべてそろっている状態になるよう、細かいところまで気を使いました。

開発で特にこだわったのは、操作体験(UI/UX)です。高齢者と母親世代をメインターゲットとしているので、シンプルな画面操作で、とにかく感覚的に使えることにこだわりました。地味な作業ではありましたが、患者さんと薬局双方の使いやすさを考えて開発できたのは、とても良かったです。結果として、シンプルだけど細部にこだわった、使い易いサービスにできたと思います。

論理より「直感」を。市場に広まるまで、ユーザーに向き合い続けたい

メドピア 後藤直樹

――後藤さんはコンサル出身で、自分で事業をつくるのはメドピアが初ですよね。コンサル時代は、どんな仕事をしていたのでしょうか?

後藤:前職では新卒から4年半、経営コンサルティングファームに勤めていました。IT企業や小売、バイオベンチャー等を対象に、新規事業企画や中期経営計画策定等を支援してきました。僕の職業人としての基礎体力は、すべてこの4年半の経験で作られたと思っています。

多くのプロジェクトを経験してきましたが、コンサルタントは、クライアントの経営者に意思決定をしてもらうまでがゴールになりがちです。自分が提案した事業やアイディアが、本当にユーザーに支持されるものなのかどうか、そこまで見届けることは出来なかった。

でも僕は、「事業の先にいる顧客やサービスを受ける人にとってベストなものは何なのか」、「自分の考えたサービスが、クライアントではなく市場で支持されるのかどうか」を体感したかった。サービスを自分でつくって広めたいと思いはずっとあり、縁あってメドピアで働くことになりました。

――実際に事業の立ち上げを経験してみて、どうでしたか?

後藤:僕のようにコンサルティングファームを経験すると、経営者に対峙する仕事なので、“伝える力”は必然的に養われます。一方で、自分自身も論理的に納得させてしまうところがあるんです。事業を企画する中で、社内で企画を通すために当然“伝える”作業をしますが、その中で、「自分の直感を論理で裏切ってしまう」ことの危うさに気づきました。

今までコンサルタントとして身につけた事業企画のノウハウを生かしつつも、経営者ではなく「ユーザーに選ばれるか」をゴールに、ユーザーの視点や感覚でサービスを考える。つまり、自分の“一個人としての感覚”を信じることの大切さに気付いた点は大きいです。

――メドピアという場所で事業をつくっていて、感じることはありますか?

後藤:代表の石見がよく「理念と利益の双方を大事に」と話しますが、これが体感できるのは、医療サービスの良い点だと思います。事業の意義(理念)に甘えすぎてもいけないし、利益だけを考えてもいけない。両立してこそ、価値ある医療サービスになります。メドピアは、そんな健全な緊張感を感じられる場所ですね。

あとは、全員野球みたいに、一人ひとりにCredoである「われわれ意識」が根付いている企業風土もとても良いなと感じています。

――後藤さんも企画だけでなく、今は薬局への営業も自分でやっていますもんね。今後、「kakari」をどうしていきたいですか?

後藤:まずは、「kakari」の普及をしっかりと進めていきます。「kakari」のコンセプトは革新的なものだと思っていますし、導入薬局での成果も出始めています。ただ、機能自体は、現状は既に世にあるものの組み合わせで、世の中にない新たなサービスだと驚かれるほどのものにはなっていません。

いま開発中の機能は世の中にない新しいものになるはずです。“次の薬局の姿”への転換を目指す薬局に寄り添って、本当に役に立つサービスとなることにコミットしていきたいと思っています。

※「kakari」のサービスサイトはこちら
※「kakari」のプレスリリースはこちら(2019年6月25日)

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