にがりのウソ
2005.09.25
カテゴリー:独り言

○○○○大辞典による「にがり」の効用をまとめてみると、こうです。

・小腸で、脂肪の吸収をブロック。(膵リパーゼを阻害)
・糖の吸収を遅らせる。
・ビタミンB1と協力して、ブドウ糖を激しく燃焼させる。

この3つの作用を根拠に、ダイエットに効果がある!ということになっています。

これを見た私はほくほくでした。話題の「にがり」の科学的な根拠を示しながら、ダイエットについて語れる、と思いました。

そこで、この効用の裏付けとなった論文を検索してみました。

しかし、、、無い、、、のです。

私たち医師は、さまざまな医学上の疑問の裏付けを取るために一般的にはこの「PubMed」というサイトを使います。

この中で様々な検索ワードをためしてみましたが、どうしても○○○○大辞典で紹介していたような論文は見あたりませんでした。

念のためGOOGLEで引いてみると、これらのにがりの作用は、国内の学会で研究者が発表した、ということのようです。そして、国立健康・栄養研究所が、「にがりはダイエットに効果なし」と発表して賛否の反響を呼んでいる、ということがわかりました。

私の考えでは、「○○○○大辞典」も「国立健康・栄養研究所」も先走りすぎという印象です。

にがりが現時点ではダイエットに対する証拠が希薄なのは明白です。ただ、その効果に対する研究がおそらく進んでいる現段階で、国の機関が効果なし、と発表してしまうのは行き過ぎだと思うのです。

しかし、「○○○○大辞典」の責任はまた重大です。

証拠がまだまだ蓄積されていない理論を、あたかも事実であるかのようにアニメーションを使って、学者のコメントを使って展開すれば、ほとんどの視聴者は騙されるに決まっています。そのような内容をイケイケで作ってしまう番組には品位が欠けていると思います。

トクホ(特定保健用食品)ブームで、様々な食品の科学的効果の裏付けを行う会社が収益を上げている、と聞きましたが、このような分野で批評的・科学的な考察を行う医師って、これからもっともっと必要なんでしょうね。

(以前別のブログで紹介した内容の訂正版です)

  • カテゴリー:独り言
Copyright(C) ALL RIGHTS RESERVED , MedPeer, Inc.