HSR: Hopital Social Responsibility(病院の社会的責任)を考える
2008.07.29
カテゴリー:医療関係

掲題について「医療タイムス」にコラムを投稿しました。
今回は結構難産でしたし、重要な問題だと思いますので、こちらにもダイジェストを投稿します。

CSRという言葉、近年「流行って」いますね。(CSRとは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の意味です。)元来、企業は、製品やサービスの提供、雇用の創出、税金の納付、メセナ活動などを通して社会的責任を果たしてきました。しかし近年では、企業が、顧客、株主、従業員のほか、取引先、地域住民、求職者、投資家、金融機関、政府などのステークホルダー(利害関係者)に、具体的かつ実効性のある配慮行動をとることの重要性が増しているのです。これをCSRという言葉で表現し、その活動の中で最も重要な行動は、ステークホルダーに対し説明責任(アカウンタビリティ)を果たすこと、とされています。そして、このような動きを投資活動や国の施策として応援する動きが盛んになってきています。

それでは、HSRはどうでしょうか?インターネットで検索してみると、2004年の資料で多摩大学の真野先生がHSRというものを考える時期に来ている、と言及されています。
HSRにおけるステークホルダーは、「患者・従業員・取引先・マスコミ・大学・銀行・患者団体など」を指します。そして、それらのステークホルダーに対しての説明責任を求められる機会が増えてきています。

CSRとHSR

CSRの特徴は、企業を「法人」という字そのまま「人=一市民」として捉え、社会に属する市民の義務として様々な責任を求める、という点です。そして、この捉え方はHSRにも含まれると考えられます。つまり、「病院」は、地域社会に属する「一市民」であり、地域住民・社会に対しての一定の責任を有すると考えるわけです。特に病院の場合は、一般企業よりも地域性が強いと思われますので、潜在顧客でもある地域住民に支持されることは非常に重要な要素になってくるでしょう。
HSRと書くと新しい用語で、病院経営者に対して新しい義務が発生するようですが、私は、これは実は古くて新しい言葉だと思っています。医師を含め医療従事者は、多かれ少なかれ、仕事内容自体が公共性が高く、「社会貢献」しているという認識があります。逆に、そのことが原因となって、改めてCSRという概念を捉えなおす必要性を感じていなかったとも考えられます。

しかし、世の中は急速に、情報開示などを求めるようになり、病院にも、概念だけでなく、明確な「説明責任」を求めるようになってきているのだと思います。この辺りのことは、Health 2.0の動きとも関係があり、「病院⇒患者」への一方通行ではなく、「病院⇔患者」のパワーシフトが起きていることを意味しているのだと考えられます。
「説明責任」の内容には、「経営方針」「診療実績」「財務状況」などと、それぞれの目標・スケジュールなど、患者さんその他のステークホルダーが病院を評価し、支えていく目安になるものが必要でしょう。

言うは易し、ですが、医療の世界だけが殻に閉じこもっているわけにはいかないはずです。
HSR経営というべき方針を持つような、先進的な病院が出現してくることは時代の要請だと思います。

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