医師兼経営者として意識している7つのこと
2016.09.21
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ここ数年で、医師でありながら起業する人が目に見えて増えてきました。
以前も医師による起業は少数ながら存在していた(例えばドクターシーラボを創業した城野先生など)わけですが、近年増えているのはいわゆるIT業界での起業です。
IT業界での医師による起業、という意味では私が日本で初めてヘルステックの領域で上場まで至ったということもあり、最近は若い医師や医学生から相談を受けることが多くあります。なので、後に続く医師・医学生のために、普段私が「医師兼経営者として意識している7つのこと」を書きたいと思います。
あくまでも私見なので、偏りはありますがご容赦ください。
1. 医師として事業を興すことに誇りを持つ
医師であれば全員言われたことがあると思いますが、今まで医師の仕事は3つあると言われてきました。「臨床」「研究」「教育」です。しかしながら、古くから「大医は国を医す」という言葉がある通り、私は4つ目の仕事として「事業」を挙げたいと思います。政府に仕える医系技官も、我々起業家も、国を医すために事業を興すべきだし、誇りを持つべきであると考えています。
2. 医師同士の輪を維持しつつ医師の輪を飛び越える
医師の世界は特殊です。「○○大学」「○○部」「○○科」のどれかで大抵の医師同士では共通の知人を見つけることができます。これは医師以外の世界では慶応の「三田会」や東大の「鉄門」に近い、とても心強いネットワークに自分がいることを示しています。但し、医師のネットワークの場合、当たり前ですが周りは医師だらけ。
そんな私たちが、ビジネスの世界で地歩を固めるには、医師の輪を飛び越える勇気が必要です。
同時に、新しい世界を見せてくれた人には必ずしっかりとお礼をしましょう。意外にこれができない人が多い気がします。
※輪を飛び越え始めると、当面は各種の営業攻勢を受けることもありますが、これも一つの世界ですので。
3. 臨床医の仕事と起業家としての医師の仕事の違いを知る
病気というのは人にとってマイナスの状態です。最近は健康増進・予防の重要性が認識されていますが、この領域でのビジネス化が容易でないことが示しているように、通常の医師の仕事は「マイナス(病気)をゼロ(健康)に戻す」仕事なのです。これに対して、起業というのは「ゼロをイチにする」仕事です。当然ですが、ニーズが顕在化していないことなどざらにあるわけで、問題が明確となっている患者を相手にしている臨床医の仕事とは全く異なります。
どちらが優れた仕事、という議論は一旦おいて、それくらい明確に違う仕事であることを認識しておくべきだと思います。
4. 一流の医師は一流のビジネスマン思考を持つ
但し、不思議なことに、一流の臨床医にお会いすると、一流のビジネスマンと類似の思考をしていることが多く新鮮な刺激を頂きます。MedPeerでは、各分野の一流の先生方にご協力を頂いていますが、協力頂ける先生ほど、外の世界の動向に幅広い興味をお持ちで、例えばMedPeerのビジネスモデル、組織体制、将来ビジョンなどに対して、鋭い指摘を受けることが多々あります。特定の分野を深く掘り下げて一流になる、ということは、同時に幅広い領域を知らなければいけないので、いわゆる「T字型」の思考になるのかもしれませんね。
5. ビジネスマンを恐れずに懐に飛び込み学ぶ
ビジネスの世界に飛び込むと、その専門用語の多さ、学ぶべきことの多様さに驚きます。戦略立案、マーケティング、営業手法、財務分析、組織運営、労務、法務等々、どれも当然医学部の授業にはありません。加えて、良く分からないカタカナ英語の羅列にエクセル・パワーポイントの作成方法など、本当にわからないことだらけです。
しかし、これらは全てある組織体が成し遂げたいことを実行するための手段に過ぎません。わからないことはわからないのであって、それを謙虚に認め、座学、実践を通して現場に飛び込んで吸収してしまいましょう。
研修医時代、患者さんの命が懸かった状態で必死で論文をあたり、タフに仕事に向き合ってきた医師であれば、スポンジのように様々なことを吸収して成長できると思います。ここは10年以上の経営経験で確信していますので、安心して良いと思います。
ただし、優先順位をつけることを忘れずに。医師はいわゆる受験戦争の勝ち組なので、座学に偏りがちです。ビジネスはあくまでも実践の場です。学びながら、考えながら、常に走り続ける必要があります。
6. 医師兼経営者にとってビジョンの浸透は何より苦手で何より大事である
想像するとお分かりの通り、教授が「今日は全力で患者さんの命を救うぞ!」と号令することはありません。ある時気づいたのですが、医療従事者にとって患者さんを救う、というのは当たり前すぎて毎日確認することではないからです。一方で、ビジネスの世界では「Why⇒What⇒How」の順で、「なぜその事業をやるのか?」について具体的に説明し、理解を得て、「何をどのように実行するのか?」を組織内で検討し、浸透させていくことが重要です。そうでない限り、バックグラウンドが異なるメンバーが一体となって力を発揮することが難しくなってしまいます。
これは、ほとんどの医師が経験したことのない組織運営の話なので、その人なりの試行錯誤を繰り返していくしかないのだと思います。
7. 簡単には辞めない覚悟を示すが、ゼロに戻っても良いという覚悟も持つ
最後は覚悟の話です。医師というのは現状の日本においては非常に恵まれた職業です。最悪の場合、非常勤の仕事で食いつないで事業に投資していくこともできるでしょう。しかし、これまで述べてきたように医師単体で起業しても間違いなく事業は成長しないし、多くの組織内外のメンバーのサポートが必要です。そのような中、「いつでも辞めて医師に戻れるから」と思っている人に、チームのメンバーはついてくるでしょうか?これは何度も繰り返しメンバーと話し、一貫した行動で背中を見せるしかないのですが、ビジネスの領域に飛び込む以上は、絶対に戻らない覚悟でやること。それ以外に人を説得する術は無いと思います。
同時に、仮に事業がある程度回りだした時に、事業が自分のためだけに存在するような志向を持つことは危険です。このような志向で運営されている会社もありますが、医師兼経営者を標榜するのであれば、是非自己保身のための組織運営ではなく、目線をさらに上に向けてほしいと思います(あくまでも私見です)。
いかがでしたでしょうか?
どれくらいニッチな人たちに向けて書いているんだ?と言われるかもしれませんが、ヘルステック業界における医師の挑戦はまだまだ始まったばかりだと感じます。数年後に他業界の方々からベンチャーごっこと揶揄されないためにも、皆でナレッジを共有して様々なチャレンジを興していきたいと思います。
最後はお決まりのリクルートですが、個人でのチャレンジはもちろん、MedPeerのプラットフォームを利用して医師がチャレンジすることにも多くの可能性を秘めていますし、実際に徐々に医師の仲間が増えてきています。ご興味ある方は是非私のfacebook経由でもお問い合わせ下さい。
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