Health 1.8くらい??
2009.06.28
カテゴリー:医療関係

日本で最もHealth 2.0関連のニュースがアツいTOBYOのエントリを見て、触発されてエントリしてみます。このサイトは本当に勉強になります。

命題は、日本にHealth 2.0は根付くのか?です。

Health2.0を単なるテクノロジーの進化と捉えるのか、消費者ドリブンの医療としての新たなムーブメントととらえるのか?本稿では後者と捉えて考察してみます。

近 年、欧米を中心に、web2.0=消費者中心の社会を受けて、医療に関してもその考え方を適用すべき、との流れでHealth 2.0の流れが生まれてきていると考えます。この根本にあるのは、良い意味でも悪い意味でも、サービスを消費する際には、消費する本人自体が必要あるとき に情報を検索し、意志決定し、アクセスして、消費し、結果に対しても責任を持ちたい、という清々しい世界観です。

この流れは、間違いなく加速するし、私個人は、最終的な責任まで含め、人生を主体性を持った形で過ごしたいと思っています。

責任、ってそんなたかが消費で、という声が聞こえてきそうですが、ここであえて責任を謳ったのはつまり、Health2.0というムーブメントには、消費者である患者自身も、責任・覚悟を認識する必要がある、ということを常々感じるからです。

以前のエントリでも書きましたが、日本人は非常に商品の質に敏感であり、かつ、公平性を意識する人たちだと思います。ラーメンが美味しければ、その ために飛 行機に乗って北海道まで旅行に行くわけです。(イタリア人だったらありえない気がします。)この根本には、質に対する意識の高さと同時に、フリーアクセス (=お金を払えばいつでも食べられる)の概念があると思います。

医療も全く同じで、日本人である以上、私を含め、自分や家族が癌になった ら、日本で最高峰、願わくば一番の名医に診てもらいたいし、そのために最善の努力を尽くすでしょう。ただし、すぐにわかると思いますが、日本でその分野の 一番の名医の時間も私たちと同じく一日24時間しかありません。仮に寝ないで3時間の手術をしたとして、一日8人、一年間で、約3,000人しか診てもら うことはできないのです。(当然睡眠は取らなければいけませんし・・)

ラーメン屋は待てばいつかは食べられますが、病気の場合は待てない場合が多いですし、待った場合でもアクセスできない可能性があります。他国の例は詳しくありませんが、日本の場合は原則価格による区別がありませんので、どのような人が名医に診てもらえるかは不明確です。

仮 に、日本全国全ての医師のランキングが出て、1番で無く、100番の医師に診てもらうことになったときに、あなたは満足できますか?仮にその結果が良くな かったときに、その結果を受け入れる覚悟がありますか??また、1番の医師に診てもらう場合、時間の制約がある以上、想定されうる区別は、「価格」や「抽 選」です が、その事実を受け入れられますか???

情報が整理され、検索されることは間違いなく便利なことです。

私が医師の経験&最近のインターネットの進化を見ていて感じるのは、その検索性・利便性の先にある、日本人の倫理観・覚悟に対する危惧です。

つ まり、私を含め全ての人は「死ぬ」のにその現実をタブー視し、「死んでしまった」理由づけとして現在のHealth2.0のテクノロジーが利用され、消費 されてしまうのではないか?ということです。このようなテクノロジーの利用の仕方は、結果として国民全体を不幸にすることでしょう。

これは、私たち日本人の未熟な「権利」と「義務」観が反映される問題だと思いますし、特に「生と死」の問題はcriticalであるため、問題が先鋭化する可能性が高いと感じています。

医療はサービスなんだから!でもお金は多く払いたくないし、他人より低いサービスは納得いかない!だって、医療は公平であるべきだから。。そう考えていませんか?

その論理を日本人全員が持った時のインパクトを想像してみてください。そのコストを全員で負担できるならありだし、負担できないなら別の手段を考えなければいけません。

私の考えでは、このHealth2.0の流れは、実は誰かが意図を持って作り出すムーブメントではありません。言ってみれば「パンドラの箱」であり、私たちは既にこの箱の蓋を開けたのです。

Health2.0の流れが起きたらどうしよう?改めて封印できるのか?ということを考えるのではなく、既に医療従事者、患者側を含め、 皆がその対処・覚悟について考えるべき時期であると思います。

これは決して、既にあるような、「医療従事者対患者」としてメディアが喜ぶような構図ではなく、現代のビジネスシーンに見られるようなwin-winの構図であるべぎです。

そのために私たち医療従事者ができること、それはまず、権利を主張するだけで無い、責任・覚悟も含め、全てにおいて自らの病気と闘いたい、という主体性を持った患者さんの声を聞くこと、そこから全てが始まる気がしています。

その対象は???

今すぐには思い浮かびませんが、そのような意識の高い患者さんは増えてきている実感があります。

日本にいきなり2.0は来ないだろうし、下手をすると大きな失望が待っていると思いますが、現代は1.8くらいにはなっているかな。。

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